バンクーバー
JTOタイトル

日本語教師JTO カナダ編2

 

第九話

生徒、第一号さん。

 

第十二話

フィオナちゃん、登場!

第十話

授業開始。

 

第十三話

おかえり、クリスティチャン。

第十一話

ちょっと慣れてきた。

     
 
 第九話.生徒、第一号さん。

たまたまMartyが矢野アカデミーでお留守番をしていた時の事。ドアの外で教室の中を垣間見ている2人のアジア人がいる。どうやら親子。母と娘らしい。一旦姿を消してしまった。しばらくすると、マタやって来た。今度はドアを開け、中に入ってきた。話を聞くと、日本語を勉強したいとのこと。私はアシスタントです、と自己紹介をし(ホントはタダの留守番)、矢野先生ご本人から直接お話を聞いた方がいいと伝え、その日は帰ってもらった。後日、矢野先生の元へ再びあの親子が訪ねたらしい。そして矢野先生の一言、
「Martyさん、教えてみない?せっかくだし。コノ部屋、使っていいよ。」
なんですってぇ。いいのぉ。ええ、ええ。やらせて頂きます。もちろん、Martyは二つ返事で引き受けた。えっ?日本語教師としての自信?あんなにナイナイ言っていたのにって?この時は全く思い浮かばなかった。
こんな立派?な教室も使わせてもらえ、そして、お金を頂く。半熟ながら、プロとしての第一歩を踏み出そうとする瞬間だった。矢野先生曰く、
「教えるんならお金をもらわなくちゃ、ダ〜メだよ。」

その後本人と直接会い、少しお話してみる。。勉強したいのは娘の方。香港から数年前移民してきた御歳18歳の女の子。くぅ〜。若い。高校を卒業したばかりのようだ。これから大学へ行くという。
どうして日本語を勉強したいのか、というと、タダ単に日本が好きなのだそうだ。日本のものは何でも小さく、かわいいとか。好きなタレントは「慎吾くん」。「I like シンゴママ!」ときた!実はこの時、Martyは慎吾ママの「おっはー」の歌は知らなかった。コノ歌が流行る前にバンクーバーに来てしまったんだもん。
でもこの第一号さん・・クリスティちゃん、はとてもマジメそう。日本語の勉強歴、まったくなし。ひらがな、カナタナがあるというのはわかっているが、全く読めないし、書けない。そう、真っ白なキャンバスにMarty色の日本語が描かれる事になるのである。これは、がんばらなくては・・。
ちなみにクリスティちゃん、英語、北京語、広東語を自在に操るマルチな子だった。さらに日本語でしょう?すごいな、と思うしかない。週一回、一時間半の授業の段取りを決め、来週から早速授業開始となった。

ちょっと余談:ここカナダは移民の国。クリスティちゃんのような子がたくさん存在する。カナダで生活するには英語が必須。家ではそれぞれの国の言葉で会話。もし両親がさらに違う国同志の結婚だったりすれば、さらに言語が増える。カナダは英語とフランス語の二つの公用語を持っているので、学校の授業でフランス語も勉強できる。3〜4ヶ国語を話せる人がここにはたくさんいるのだ。このような人たちと会うと、一生懸命英語だけを勉強している日本人って・・・・。(Martyも含む)

 
 
 第十話.授業開始。

とうとう授業を開始する。さて、第1回目の授業って、ナニをすればいいのやら。授業の前に色々考えてみる。相手は子供ではなく、もう大人。きちんと理論立てて説明をしなければ納得しないだろうし、絵やゲームで誤魔化せるとも思わない。とにかく、日本語と英語の違いを話し、「あいうえお」を教えつつ、それを読む練習をしながらあいさつを教えていく事にした。ここで、日本にいた時に習っていた中国語が大変役に立った。コノ時点で実はすっかり中国語は忘れていた。でも少しは覚えていたため、彼女の気持ちが分ったし、中国系の生徒に多い間違いも理解できた。Martyよりはもちろん英語はできた彼女だったが、移民組なので、難しい英単語はわからない。そんなときは漢字。どんなに難しい単語でも、漢字を書けば理解力はグンと早まる。漢字ばっかりに頼ってはいけないのは分っている。でもその漢字1つ使う事でお互いの言いたい事がわかるのなら、使った方がいいと思った。そしてMartyたちの授業は、英語+中国語少々の媒介語を使っての授業になっていった。

「日本語で日本語を教える」ことはとても理想的なことだと思う。みんながみんな英語が話せるわけではない場合もあるし、日本語の音に早く慣れられる。同時に大勢に教えることも出来る。でも日本語学習者の初心者には、多少、学習者の母国語を使って教えてもいいんじゃないか、とも思った。もし自分達が初めて・・・・・・そうねぇ、アラビア語を習う事になった、としよう。現地の言語で習っても、最初はさっぱり分からないと思う。とても時間を要することになる。ましてやあの文字。右から書く文なんて、戦前の日本のよう。文化も、スタイルも違う国の言葉を習うということは、それ相応の努力が必要になる。その時間を少しでも短縮でき、理解力も早められれば、学習者にとってラクになり、勉強する楽しみも増えるのではないか、と思う。Martyとしては、最初は母国語なり、英語なりで教えてもヘンじゃないと思った。ただ、それに頼らないようにするのも教師の役目だと思う。微妙な感覚が必要になる。・・・・Martyにできるのかしら。

この時期は、彼女は春休み。週2回の授業が可能だったので、Martyの空き時間を利用して授業を進めていった。「語学」はある意味「センス」が必要だ、とヒシヒシ感じた週だった。なぜなら次の週、3回目には、彼女はひらがな全部を読め、書けていたから。

 
 
第十一話.ちょっと慣れてきた。

Martyの日系お土産屋さんでの仕事が始まる。まだウィンタータイムなので、1日10時間週4日の仕事だ。つまり週3日あくわけで、Martyとしても空いた時間をこのような日本語を教える、ということに費やす事ができるということは、とても有意義で自分自身のためになることでもあった。
着々とクリスティちゃんも覚えていっている。脳味噌が柔らかい、というのはこのことをいうのだろうね。教えた事をまるでスポンジが水を吸い取るように吸収していく。もちろん彼女の日本語への興味がそうさせているのが、何よりの起爆剤。あっという間にひらがなが読め、書け、カタカナも少しずつ覚え始めていく。最初は意味、文法なんてわからなくてもいいから、とにかく自己紹介は毎回させていた。
「ハジメマシテ。クリスティデス。香港カラキマシタ。バンクーバーニスンデイマス。シュミハスイミングデス。ドウゾヨロシク。」
コレだけを毎回毎回繰り返す。時々Martyの友達が見学に来る。その時がいいチャンス。一対一で教えていると他の日本人の発音に触れる機会が少ないので、友達が来た時はいっぱい喋ってもらう。この時に自己紹介が役に立つ。やはり最初は緊張するようで、Martyとやるときはスラスラできるのに、いざ他の日本人が来ると、シドロモドロ。「ハジメマシテ。クリスティデス。・・・・・ドウゾヨロシク」
えっ、それで終わり?やはり、Martyだけの日本語に慣れさせすぎてしまったかなぁ。
自己紹介、あいさつは基本として、数字が次に大切。カレンダー、時間、お金。どれも数字が入ってくる。さて、この中で一番難しいのはどれでしょう。ジャーン、カレンダーです。特に1日(ついたち)〜10日(とおか)の読み方。これはほんと、大変で、なかなか覚えられない。これも根気よく、毎回繰り返すべきものの1つ。

お金の練習としては、このメトロタウンはもってこいの場所だ。数え切れない程のお店が入っている。
「今日はフィールドトリップ(遠足)ね。」
そう言って連れ出し、アチコチ洋服屋や雑貨屋をまわりながら、
「これはいくらですか。」
「コレハ9ドル99セントデス。」
を繰り返す。時々形容詞を入れてあげる。
「これはいくらですか。」
「299ドルデス。」
「高いです。Expensive、right?」
「これは安いです。Cheapね。」
うんうんうなずいて納得しているようだわ。結構楽しいフィールドトリップだった。
まだこの段階は彼女にとって簡単らしい。ホイホイッとこなしていく。
そんな中、彼女が春休みということを利用して、実家の香港にちょっと帰ることになった。約1ヶ月間。しかも日本のツアー旅行付き。非常に楽しみらしい。気を付けていってらっしゃいね。日本語、使ってきてね。

 
 
第十二話.フィオナちゃん、登場!

さて、ここでもう1人の生徒をご紹介。フィオナ チャンという、23才の女性。チャンは苗字。そう、コノ子も偶然香港からの移民組だった。ちなみに、「クリスティ」やら「フィオナ」やらの英語の名前は、みんなそれぞれ自分で付けるようだ。本当はちゃんとした中国名をもっている。
彼女を紹介してくれたのは、矢野アカデミーの上級コースで一緒だった、台湾人の戴(タイ)さんだった。今まではこの戴さんが彼女に日本語を教えていた。なので、初めて会った時は、すでにひらがな、カタカナ、さらに、形容詞、動詞も少しできていた。ただ、日本語を一緒に話してくれる日本人の友達がいなかった。というのも、彼女は会社員で、普段は仕事場と家の往復だけ。タマの休みにDVDなどで日本のドラマを見たり、日本のCDを聞いたりして過ごしているのだが、実際会話する友達がいないのだ。それにせっかくここまで覚えた日本語を忘れたくないようで、週一でもいいから、ネイティブの日本人と会話がしたかったとのこと。戴さんの日本語もほぼ完璧なのだが、やはりネイティブにはかなわないと言っていたし、途中で中国語になってしまって、なあなあで終わってしまうからだとか。。彼女達にとっては、日本語をペラペラ話せる私達日本人がとてもうらやましいらしい。逆に考えてみると、私達が英語をネイティブスピーカーから習いたがるのと同じだね。

彼女、フィオナちゃんも、クリスティちゃんと同様、北京語、広東語、英語が完璧。日本語もちょろっと。なんでこんなにたくさんの言語が話せる人が周りにいるのかしら。そのたびにMarty、ドンヨリしちゃう。彼女の母国語は広東語。どうやって北京語が話せるようになったかを聞いてみたら、なんと、勉強してないって。好きな芸能人がいたり、映画をみたりして自然に覚えてしまったんだって。英語は、高校のときにイギリスに留学経験があり、その後すぐカナダに移民してきたのでそのまま覚えたことを日常使ってきたらしい。そしてMartyは下世話な質問をした。
「モノを考える時、何語で考えるの?」
「Well......ペキンゴ」
母国語でない北京語で考えるとは、驚いた。本人もなんでかわからないと言っていた。なんとも不思議な人間の脳ミソ。

さて、そうして授業が始まっていった。といっても、そんなにガチガチした授業ではなく、月一回は一緒に日本食を食べに行ったり(寿司好き)、彼女の家で一緒に日本語のDVDを見ながら、会話の表現を勉強したりしていった。特に竹ノ内豊や大沢としおが好きなフィオナちゃん。ドラマ「星の金貨」は外せないでしょう。もちろん、知ってました。ほとんどは彼女の家で日本語のお勉強をし、時々スターバックスでお茶を飲みながら、プリントをさせてみたりした。
でも週一回、仕事の後の勉強は、なかなか辛い。一時間半を集中しきれないのだ。自宅だと、彼女は夕飯を食べ終えているので、さらに眠気が襲う。授業に工夫が必要だ、と思った。

 
 
 第十三話.おかえり、クリスティチャン

1ヶ月間の里帰りと日本旅行を終えて、クリスティチャンが帰ってきた。この日は、授業を1時間ほどで切り上げ、あとは旅行の話を聞くことにした。彼女はたくさん写真を持ってきてくれ、色々説明してくれた。香港だけでなく、シンガポールにも行って来たって。
日本は、ちゃんとしたツアーに参加し、東京のお台場、富士山御殿場近辺、オプションでサンリオピューロランドも行って来たとか。日本へ旅行をしたことがないMarty(当たり前)だけに、日本旅行の話が聞けるなんて珍しい。なかなかイマドキの場所をおさえてるいいツアーだったようだ。一度、参加してみたいわ。
何か日本語を話したか聞いてみた。すると、ちゃんと習ったことを使ってきたらしい。
「イクラデスカ。」どうやら、前回のフィールドトリップが役に立ったみたい。これが聞ければ大したもんだよね。う〜ん、先生冥利に尽きる、というとこかな。Martyもうれしい。また日本へ行きたいと言ってた。

1ヶ月もお勉強から離れていただけに、日本語を忘れちゃいないか、ちょっと心配だった。でも、ぜんぜん大丈夫(←ホントはこの使い方、不適当)。きちんと覚えていました。ま、1日(ついたち)を「ツイタツ」というのが気になるけど、そのうち直るでしょう。・・・ドキッ。東北出身のMartyのせいかしら。いやいや、Martyもズーズー弁と東京標準語を使い分けるバイリンガル。日本語教師たるもの、きちんと標準語を話しています。
とにかく、楽しく勉強できる、っていうのはすごいと思う。この純粋な気持ちをずっと持ち続けて日本語の勉強につなげて欲しい。そして、この純粋さをなくさないような、楽しい授業もしなくてはいけない、とあらためて感じた。

JTOカナダ編3へ

 

 
当サイトの内容を参考に行動して、あなたに不都合が生じても一切責任は負いません。

Copyright (C) 2000-2014 バンクーバー暮らし方 編集室 All Rights Reserved