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日本語教師JTO カナダ編4

 

第十八話

ニコさん。

第十九話

ブライアンさん。

第二十話

色々な人たち。

 
 第十八話.ニコさん。

ちょっとドキドキしながらテーブルに着く。自己紹介をする。彼はニコさん。日なかなかハンサム本語だったら「ニコル」なんだけど、「ル」の発音って「ウ」に近く、「ニコウ」になり、「ニコ」になったらしい。物静かできちんとしてる。実は彼は毎日この時間にここに来ている。しかも、カナディアンにはめずらしく、授業開始の20分くらい前には着いているのだ。
色々話をしていくなか、彼の特技に注目してしまった。それは「漢字」。ニコさん、大の漢字好き。おもむろにカバンからカードを取り出す。よく受験とか試験で使う単語帳のようなカード。見せてもらうと、これまたすごい。表には漢字がきちんと明朝体で書かれている。しかも色は金。ウラには音読み・訓読みそして英語訳。もちろん色は金。カードは100枚くらいありそだ。毎日新しい漢字を加えていき、その確認も踏まえて授業を受けている。自分の知らない読み方があると喜んで書き込んでいく。これらの漢字は、日本語の教科書に載っていたものを抜き出し、最初から書いていっているらしい。とにかくすごい量。それに劣らず、きちんと覚えている。せっかくだからそのカードを使い、単語を作って遊ぶ。時々教科書を使い、1レッスン分を勉強する。
意外と白人さんって漢字を好きな人が多い。自分の名前に漢字を当てはめたりして楽しんでいる。日本語教師のきっかけともなり、前出の「ディアン」というカナディアンも漢字が好きだった。彼女がはんこを作るとき、是非漢字にしてくれ、と市役所の人に頼み、当て字を作ってもらったらしい。「ディアン」の漢字って?・・・「庵員」。これで「ディアン」と読ませるらしい。市役所の人が考えたようだが、本人は大変気に入っていた。
普段私たちが使っている漢字。漢字にはそれぞれ意味がある。アルファベットが羅列してたら意味を理解するまで時間がかかる。でも中華街に行ったとしよう。中華料理のメニューを見たら、最低でもチキンなのか牛肉なのか、お粥なのかスープなのか、わかってしまう。世界広しといえども、漢字を使う国はそう多くない。しかも、中国語は1つの漢字に対して1つの読みしかないが(時々例外アリ)、日本語のように音読み・訓読みと別れ、さらに音読みが何種類もあるような、そんな国は・・・ないんじゃない?初めて漢字を勉強する人は、それは苦労するところだろう。そんな日本に生まれて、自由に漢字を操れる日本人として、漢字を大切にしたいと思った。

 
 
 第十九話.ブライアンさん。

この「日加センター」に通うのもだいぶ慣れてきた。Martyが行くのはだいたい朝一番。すると、いつも来る人は決まっているものである。ブライアンさんもその1人。日本語クラスの割り振りは事務の人が適当に振り分けているのだが、なんだか、このブライアンさんとはよく一緒になった。これも縁だね。彼は香港からの移民組み。年のころは22〜24才くらい。話をしていくと、すでに日本での就職が決まっているとのこと。四国の某英会話学校に行くことになっている。そのために事前に日本語を勉強したいそうだ。彼とはかなり一緒の時間を共有できたので、Martyのペース、やり方で進めることができた。時間の初めはお決まりの、
「始めまして、ブライアンです。バンクーバーに住んでいます。どうぞよろしく。」ひたむきなブライアンさん。
を、毎回繰り返す。彼も嫌がらずに積極的に発話してくれた。
だいぶ日本語に慣れてきて、これから、という時、Martyの日本への帰国の時も迫ってきていた。限られた時間の中有効な勉強をしていかなければならないのだが、そういうときに限って一緒の時間にならないもの。でもこれはしょうがない。彼を独り占めにするわけにはいかない。これがここのルールでもある。でも、こんな風にして、決まった時間に来て勉強していったら、そりゃ恋の花咲くこともありえるわ。・・・・別にMartyがブライアンさんから何か言われたとかじゃないです、念のために。
でも、彼にはがんばって欲しかった。というのは、ちょっと残念な話を聞いたことがあるからである。それは・・・。カナディアンに限らないが、日本へ行って英語の先生のアシスタントなどを経験できるJETプログラムというものがある。以前、カナダで生まれた日系人がこのプログラムに参加しようとしたときの話。カナダ人だったら金髪で青い目というイメージ。でもその人は日本人そのままの容姿。英語はネイティブよ。でもイメージが合わない、と言われ、却下された、というのだ。これってひどくない?差別の何者でもないと思う。逆に、顔は日本人だけどカナダ人なのよ、移民の国だからこういう人がたくさんいるのよ、ということを教えるいいチャンスになったはずだったのに。
最近、その辺は改善されたようで、日系カナダ人の知り合いも無事に行ってきた(内容はまだよくないようだが)。ブライアンさんも、パッと見はアジア人。でもカナダ人。こういう人たちがもっと日本へ行き、日本人の凝り固まったステレオタイプ的な考え方を変えるきっかけになって欲しいと思った。

 
 
 第二十話.色々な人たち。

この日加センターにきて日本語を教えていると、本当に色々な人々に出会える。例えば、以前外交官をしていて日本で生活した経験があるおじーちゃん。彼は日本の神話が大好きだった。日本人でさえそうそう知らない「スサノオノミコト」やら「アマテラスノオオミカミ」やらの話を、逆に日本人に教えてくれた(笑)。また、日本語ペラペラの、台湾系カナディアンの女の子。日本に1年留学してきたという。「敬語は難しいよ。」と言っていた。彼女のおじいさんは日本統治下時代の台湾人。「トウサン世代」だね。家では日本語が日常当たり前に使われていた。その影響で日本語を勉強したいと思ったそうだ。
はたまた、そうねぇ、年のころは60歳くらいかなぁ。いわゆるおっちゃんカナディアンも来ていた。彼はただおしゃべりがしたいだけのようだ。両腕には見事なタトゥー。しかも日本語で彫られていた。また、大学生も来ていた。彼らは地元の大学の日本語学科に所属し、日本語を、とりあえずみんな、いい子。勉強している学生。このセンターで日本人を捕まえては、宿題を手伝わせていた(笑)。
楽しかった。人々の数だけ目的があり、教え方も違ってくる。それが経験できただけでも有意義だったと思う。ここでは英語を使っての授業だった。それは、ここはカナダで、英語圏の国だからだ。相手は大人。きちんと説明してあげれば理解できる。日本への帰国の時も目の前で、みんなに別れを告げるのは寂しいものだったが、日本へ帰ってから、本格的に日本語教師の勉強をしてみよう、という気持ちは固まっていった。そう思ってから間もないとき、Martyの心の中では、ある不安が湧き上がっていた。今、自分は英語で日本語を教えている。でも日本に行けば、日本語を日本語で教えなければならない。う〜ん、Martyはまだ、一番大事なところを見逃しているのではないかな・・・?と。
いわるゆ教授法の中の、直説法というものだ。逆に日本にいる英語圏の人たちに、英語を使って教えてあげられればそれでいいのかも・・。そんな思いもあった。でも、日本で日本語を勉強している留学生のほとんどがアジアからの学生。英語が話せない学生だっているわけだし、直説法を勉強しておけば、世界中どこででも日本語を教えることができちゃう。頭の中でグルグルいろいろなことが回り、はっきりと決められないまま、帰国を迎えたのである。
さようなら、カナダ。いい経験をありがとう。

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