バンクーバー

日本語教師JTO 新米教師編4

 

第八十一話

第18課。

 

第八十六話

プライベートレッスン。

第八十二話

ボランティア。

 

第八十七話

第22課。

第八十三話

第19課。

 

第八十八話

第23課。

第八十四話

第20課。

 

第八十九話

忘年会。

第八十五話

第21課。

 

第九十話

3人だけのお別れ会。

 
 第八十一話.第18課。

この課では、「私は○○をすることができます。」を勉強する。
まだ可能形を使う形ではなく、「〜することができます」という形。つまり、「泳ぐ」という動詞を「泳ぐこと」という名詞にする文型。

ここでのJTOの担当は「私の趣味は○○することです。」。
「趣味」という言葉はもう入っているので、形の練習をしっかりやる。
「私の趣味はサッカーです。」といっても、「すること」なのか「見ること」なのかがわからない。そこでこの文型を使ってより言いたいことを言えるようになる。
でもこの文型の前に「泳ぐことができます」といった形を練習しているため、「私の趣味は泳ぐことができます。」と引きずられてしまっている。う〜ん、大丈夫かな・・・。

そしてもう1つ、この課では「〜の前に」という文型の導入もしなければならない。
「私は昨日、お風呂に入りました。それから寝ました。・・・・お風呂に入ってから寝ました。16課で勉強しましたね。」と既習事項を確認する。そして学生にちょっとふる。
「Aさんはご飯を食べてから何をしますか。」
「宿題をして、お風呂に入って寝ます。」
かるく黒板に絵を書き、学生のモノを使って導入する。
「Aさんは寝る前にお風呂に入ります。お風呂に入る前に宿題をします。」
こんなふうでいいのかしら。
あとはひたすら口頭練習。

 
 
 第八十二話.ボランティア。

だいぶ学校に慣れてきたのもあり、このあたりでちょっとだけ他の世界も見たくなってきたころ、ずっと前に日本語のボランティアに登録していた協会のほうから、マッチングしたい留学生がいるから一度会ってもらえるか、という電話をもらった。学生会館がやっているボランティアで、かなりしっかりしたシステムになっている。登録しても、会ってみて合わなさそう、と感じたらやめることができる。まずは会ってみないとわからないので、その学生会館まで行ってみた。
相手は韓国人留学生。大学院で日本文学を専攻しており、論文の添削を含めた勉強をしていきたいとのことだった。しかも、韓国の大学で日本語を教えていたっていうじゃないの。・・・・・JTO、ちょっとビビル。もしかしてJTOじゃ役不足かもしれない。
協会の人を交えてマッチングがはじまった。それぞれの自己紹介から始まり、自分の得意分野、できること等を色々話し合う。
彼女の日本語は完璧だった。日本語を教えることは何もない。んじゃ、JTOは何を教えればいいの?
彼女としては、自分のテーマである「芥川龍之介」の論文の添削をしてほしいとのことだった。やはり論文になるとちょっと高度な日本語を使ったりするため、細かいところで日本語が怪しくなると言う。
・・・・ははっ。JTO、確かに日本文学科出身だけど、なんてったって、ボンクラ大学だからそんな高度なこと、できねーっ。
でも色々話していくと、この彼女、とーってもいい人みたい。日本人の礼儀や文化をきちんと踏まえている。それに今はまだ論文の時期じゃないから、一緒に芥川の短編を読んでくれるだけでいい、と言っている。・・それならやってみようかな・・。自分のためにもなるし。ふむふむ、そういえば、確かJTOの妹が芥川の卒論を書いてたはず。ふふ。いざって時は妹に聞こう。
そんなことを考えながら、結果的にはボランティアをOKした。

協会の人が言っていた。
なんでも、ボランティアに登録している人は何百人といるのだが、日本語教師経験者や日本語の養成講座を受けた人はほとんどいないという。つまり、JTOが珍しく日本語教育に携わっているニンゲンだった、ということだ。留学生の彼女も、今まで何回かマッチングしたのだが、論文添削以前に、逆に「韓国語を教えてくれ」などという人ばかりで、自分の本来やりたいことが進まなかったらしい。
ホントは今回もまったく期待していなかったと言っていた。が、どうやら、JTOを気に入ってくれたみたいだった。そして早速週1回、県民サポーセンターのボランティアフロアーで勉強することを約束した。

ボランティアなのでもちろん無償なのだが、今回は協会からのお礼ということで図書券をいただいた。
その他、教材などは留学生が用意すること、2回目以降は2人で連絡を取り合って進めていくこと、等話してその日は終わった。
早速来週、始まる。

 
 
 第八十三話.第19課。

ここでは経験の「〜たことがあります」を勉強する。
「私はディズニーランドへ行ったことがあります。」などなど。
この課では「た形」がでてくる。この「た形」、「て形」と同じなんだけど、JTOのクラスはちょっとユックリ・ぽあぽあ〜なクラス。まず「て形」がでてくるか、が問題。
案の定、出てこなかった・・・。かなしー。
導入はするんだけど、その後の動詞の変形練習で時間がかかり、一体なんのために変形練習やってんだっけ?状態になるときもある。だからJTOは変形練習のあとに必ずもう一度、導入文に戻って、いつつかうのか、このときの動詞の形はなんなのか、を説明する。そうすると、「ふーん、・・・なるほど・・・・。ぽぉ〜っ。」ってな感じでわかったような、わからないような、そんな目をしてくれる。・・・・まだまだJTOの力が足りないのかしら・・・・。くすん。
動詞の変形練習は大切だけど、どうしてこの練習をやってるんだかわかんなければ意味がないもんね。

この他、「た形」では、「〜たり、〜たりします。」が勉強できる。
例えば「休みの日はテレビを見たり、本を読んだりしました。」など。
これはそんなに難しくない文型なので、意味はすぐ入った。のだが、やっぱり「た形」がうまくでてこない。この「た形」の練習で時間を使ってしまい、行きたかったところまで行けなかった。・・・いっつもこんなんだけどね。

 
 
 第八十四話.第20課。

この課は「普通体」を勉強する。
「普通体」というのは、普段私たちが話している言葉。
「これ、食べる?」ー「うん、食べる。」
「そこにはさみある?」−「ううん、ない。」
「辞書持ってる?」
などなど。
よく学生が言うことだけど、
「他の日本人の会話と教科書の会話は違います。」
そうなのよね。そうなの。わかってるのよ。わかってるの。
でもね、しょうがないのよ。
やっぱりきちんとした言葉使いを最初に覚えないと、あとあとまで引きずってしまう。だから最初って実は大切。きちんとした言葉を崩していくのは簡単だけど、スラングを丁寧な表現などに上げていくのは大変なこと。ましてや、留学生として日本に来ているというのなら、ほとんどの日本人とは初対面になるはず。当然会話も丁寧でなければならない。だからどうしても丁寧な表現の勉強が中心になる。
あるクラスで、初級の勉強・・・つまり「です・ます体」の勉強を国でしてこなかった学生がいる。JTOと話していても、
「先生、昨日、どこ行った?」
「この本、おもしろい。今度、貸してくれる?」
といった「普通体」の会話になってしまっている。・・・・それともJTOがなめられているのか?!
いやいや、確かに、明らかに丁寧体の勉強が足りないようだ。まだJTOや学校内ならいいんだけど、これが外に出て、初対面の人や年配者、大学の教授、会社の上司など、気をつけなければならないときにきちんと丁寧な表現ができるか、といったら、やっぱり怪しい。
かといって、学生達はこういった「普通体」を話したがる。・・・難しいよね。
きちんと使い分けられればいいんだけどね。

で、この課はJTO、問題担当だったので導入ナシでした。
しかし、この課、JTOのクラスにとって最大の山場となった。
この「普通体」は会話だけでなく、例えば「日記」などは「普通体」で書いたりする。その練習としてよくするのが、「丁寧体」を「普通体」に、「普通体」を「丁寧体」に換える練習。
これがっ。コレガッ。
できない〜っっっ!
あまりにもできない。
担任のベテラン先生もかなり参っていた。かなり時間を割いた。

 
 
 第八十五話.第21課。

21課は、
・「〜と思います。」
・「〜と言います。」
・「〜でしょう?」

JTOは「〜と言います。・〜と言いました。」の復習と「〜でしょう?」の導入担当になった。
この「〜」の部分には、20課で勉強した普通体が入る。
「明日は雨が降ると思います」「日本は交通が便利だと思います。」、「首相は来月アメリカヘ行くと言いました。」「首相は経済の問題は難しいと言いました。」など。
でも「〜でしょう?」・・・・・「確認」の「でしょう?」のほうは、な形容詞・名詞は「だ」はつかない。
「あの人は親切だでしょう?」・・・×。
→「あの人は親切でしょう?」・・・○。
これって、トリッキーだよね。「あの人は親切だしょう?」という表現がちっと流行ったのもわからなくもない。

さらにJTOは気づいた。・・・・「気づいた」んではなく「知らなかった」だけ?
日本語の疑問文には「?」マークは基本的に、つかない。つかないのよぉ〜。
メールとか、いろんなところで「?」マークは見られるし、実際JTOもこれでもかっ、ってくらい使っていた。
でも実は、つけないのが本当。これは養成講座で知ったことだった。
なのに!!
この「〜でしょう?」にはちゃんと「?」マークがついている。教科書に。しかも堂々と。しなやかに。
日本語って、面白いねぇ〜。
この「確認」の「〜でしょう?」って、この「?」が表すとおり、語尾のイントネーションがあがる。疑問文も、もちろんあがる。
そしてこの「〜でしょう。」には二通りの使い方がある。
「明日は雨でしょう。」・・・・天気予報などで使われる推量の「でしょう」。
「7月にお祭りがあるでしょう?」「ええ、ありますよ。」・・・・確認の「でしょう」。
つまり、この2つを区別するために「?」マークがついているんだよね。なんか、すごいな。
教科書・・・書き言葉では「?」をつけなければ、どっちがどっちかわかんないもんね。
実は20課の「普通体」のところ、JTOは導入しなかったので気づきが遅れたが、ここでも「?」が使われている。
「これ、食べる?」
「みんなで京都に行かない?」
のように。・・・・そう。これも同じで、
「これ、食べる。」「みんなで京都に行かない。」
と書くと、疑問文じゃなくなっちゃうのよね。
・・・ほかの先生方にとっては小さなことかもしれないが、JTOにとってはかなりの「気づき」だった。

 
 
 第八十六話.プライベートレッスン。

以前書いた補習組の1人と丸2ヶ月間、JTOはプラベートレッスンをしてきた。いい感じになってきていたのだが、とりあえず終了することになった。一対一のレッスンとはいえ、事前の準備も必要で、特に導入をするときは絵カードなどを使い、授業と同じ要領で導入する。これはなかなかいい経験になった。

と思ったのもつかの間、またすぐ次のプライベートレッスンが入った。途中からJTOのクラスに入ってきた学生。日本と自分の国を行ったり来たりしているので、簡単な日常会話はわかるし、言っていることも理解できるようだった。が、動詞の活用など、細かいところはまったくダメ。「ます形」や「て形」などの言葉も知らないし、変形できない。ただただ、生活で必要な言葉を覚えているだけのようだった。
・・・・う〜ん、きびしいね。
他の学生はもう21課まで終わっている。やはり入っている語彙や活用のし方の基本はできている。この学生達と一緒に勉強するのはかなりきつい。
ということで早速一対一の勉強が始まった。
実はこの学生は自分の国で水墨画の先生をしている。もう何回も個展を開き、その関係で日本によく来ているそうなのだ。しかも日本に住所を持っている。あまり詳しく知らないが、芸術家、には違いない。普段も忙しそうだ。学校へも来たり来なかったり・・・。
と、始まったばかりのレッスンだったが、学生の都合で続けられなくなり、すぐ終わってしまった。学校のほうも改めて4月から入学しなおすようなことを言っていた。3回くらいしか勉強しなかったんじゃないかな・・・。なんだかバタバタと通り過ぎていったようだった。

と思ったのもつかの間、ある日クラスへ行くと、見知らぬ学生がチョコリンと座っている。むむ?誰?と思っていたら、新しい学生らしい。JTOの授業がない時に入ってきたようだ。この新しい学生、もう社会人で、日本語が仕事に必要とのこと。午前中は勉強し、午後会社へ出向く。日本語のレベルを確認・・・・・するまでもなく、レベルゼロということを聞かされた。またしても次のプライベートレッスンの話しがきた。
とりあえず午前中はクラスに入って一緒に勉強しているが、ひらがなも読めないこの学生。・・・つらいだろうなぁ。日本語レベル的にもみんなに追いつくことはできないかもしれないし、すでにコミュニティが出来上がっているクラスに溶け込むことも容易じゃない。いつも1人、下を向いている。ひらがながわからないから、教科書すら読めない。だから先生も当てられない。つまり授業中は一言も発話できない。だからせめてプライベートレッスンくらいは楽しく、笑顔が出る授業をしてあげたかった。JTOができることを100%与えて、なんとか簡単な会話をさせてあげたかった。
でも助かったことに、この学生、飲み込みが非常に早い。カンがいい、というか、前の時間に勉強したことと関連付けて覚えているようだった。宿題もきちんとやってくるし、前の時間にやったことはほとんど覚えていた。教えるほうとしても、メキメキ上達して行く学生を見ていると、ある意味、ライバル心がでてくるもの。少しスピードを上げてみたり、プラスαを教えてみたり、そういうことができる学生だった。
ひらがなさえわかれば、通常の授業で教科書の例文は読める。JTOはとにかく例文はこの学生に読んでもらった。数回のレッスンの後には、もうひらがな、カタカナがほぼ読めていた。
・・・・・実はJTOのクラスにはいまだ、ひらがな、カタカナがあやしい学生がいる。その学生よりも読めていた。・・・なんでぇぇぇ。

 
 
 第八十七話.第22課。

この課では、
「これは雑誌です。コンビニで買いました。」→「これはコンビニで買った雑誌です。」
という、「連体修飾」を勉強する。
この「連体修飾」、日本語と英語は逆になる。何が逆かって?
それは、文の方向。
例えば上の、
「これは雑誌です。」の「雑誌」を修飾しようとすると、言葉は「雑誌」という名詞の左にどんどんついていく。つまり、
「これは雑誌です。」
「これはコンビニで買った雑誌です。」
「これは昨日コンビニで買った雑誌です。」
「これは昨日友達と一緒にコンビニで買った雑誌です。」
のように。
でも英語は逆で、「雑誌(magazine)」という名詞の右に言葉が増えていく。
「This is the magazine.」
「This is the magazine (that) I bought at the convenience store.」
「This is the magazine (that) I bought at the convenience store yesterday.」
「This is the magazine (that) I bought at the conveniece store with my friend yesterday.」
これ、面白いね。
頭がこんがらがるね。

で、この課の導入は他の先生がしたので、JTOは復習と活動、教科書の会話部分を担当した。
復習は特に問題なく終わる。活動も活動集を使い、難なく終了。
そして会話。キーワードや大切な文型を虫食いにしたプリントを配り、テープを聞いて書いてもらう。これも無事終了。
この会話の内容だが、「ワン」さんが不動産屋に行き、アパートを探す、という内容のもの。
JTO、前の日にインターネットでダウンロードした、いくつかの賃貸物件を見せる。なるべく学生が住みそうな間取りとか場所とかを選んだ。ちょうどこのころって、学生によっては寮を出て一人、もしくは友達とアパートを借り始める時期。1つ例を出し、黒板に書き、アパート用語を少し教える。
「和室」「押入れ」「ダイニングキッチン」などは教科書に載っている。が、肝心の「1K」や「1LDK」といった部屋の広さ、「UB(ユニットバス)」などの言葉も知っておいたほうがいいと思い、説明した。ほとんどの学生はこの言葉を知らなかったようだ。
いつかアパートを借りるとき役に立ってくれるといいな、と思った。

そして授業も終わり、教室を出るとき、1人の男子学生がテテテテーとJTOの前に走ってきた。しかも普段あまり自分から話さない学生だ。質問かな?
「先生、これ、なんですか。意味、なんですか。」
と、黒板に漢字を書き始めた。・・・・う〜ん、漢字がよくわかんない。
「これは、どこで見ましたか?何に・・・・。」
ん?なんか手に持ってる。ん?んん?
やだーっ。
「アパマン」じゃないのぉ。もっと早く出せっつーの。・・・・いや、JTOの言葉が足りなかったんだよね。
その学生はおもむろにページを開き、「これこれ」と指差す。
−追焚−
「『おいだき』です。お風呂に入ります。次の日お風呂のお湯が冷たいです。でもまた暖めることができます。」
せいぜいこの程度の説明しかできなかった。
J:「Aさん、引っ越ししますか?」
A:「?」
J:「(そっか、引っ越しがわかんないのね)どこへ引っ越しますか。どこへ『搬家(中国語で引っ越しの意味)』?」
A:「まだわかりません。」

結局この学生、引っ越ししなかった。

 
 
 第八十八話.第23課。

この課で勉強するのは、
1「〜とき」
2「〜すると、〜」。
1は、「ご飯を食べるとき『いただきます』と言います。」・「ご飯を食べたとき『ごちそうさま』と言います。」
2は、「このボタンを押すと、切符が出ます。」・「この角を右へ曲がると、郵便局があります。」

この1の導入担当になった。
「とき」の前が動詞で、その動詞が現在か過去か、さらに文の最後の時制が現在か過去か、実は4通りの文が作れる文型。・・・・養成講座を思い出すわ・・・・。うまくできなかったっけ。

これは順番にきちんと導入する。
まず最初、
「Aさん、夜寝ます。電気はどうしますか。」−「消します。」
「夜寝ます。電気をします。→夜寝るとき電気を消します。」
というような導入を行い、最初は代入練習。「電気を消します。」を「テレビを消します」「トイレへ行きます」などに置き換え、練習。
次に形の確認をする。「『普通体』+とき」ですよ。と。
その後、怒涛の2文1文練習。
このとき、何回か学生に確認する。
「夜寝るとき電気を消します。もう寝ましたか?」−「まだでーす。」というふうに。
これは問題なく終わる。

次に、
「今からわたしは教室を出ます。電気を消します。まだ出ていません。−教室を出るとき電気を消します。」・・・・実際に電気を消して外へ出る。「わたしは教室へ入ります。入りました。電気をつけます。
−教室に入ったとき電気をつけます。」
と、導入。
そして順次練習をする。
しかしここではちょっと気をつけるところがある。
「教室に入った」のは過去のこと。でも「電気をつける」のはこれからのこと=未来のこと。と学生は思う。時制が複雑になっている。実は「教室に入った」ことは「過去のこと」なんだろうか。これは「仮定」とも言える文型だ。
そのほか、ここでは、「○○したときどうしますか。」といった練習ができる。例えば、
「パスポートを無くしたときどうしますか。」
「風邪をひいたときどうしますか。」
など。こられは典型的に、「風邪をひいたらどうしますか。」と置き換えられてしまう。まだここでは「たら」は勉強していないんだけどね。

JTOの今日の担当はここまでだった。

今日は学生達、午後も授業がある。お昼休みにみんなでピザを取って教室で食べるらしい。
実は前の日に1人学生が、ピザの頼み方を聞きにきていた。ピザ屋のチラシを貸し、注文の仕方を教えてあげたが・・・・・難しいだろうな、きっと。
注文するとき、JTOの授業時間の途中で注文するのが丁度いいらしい。結局、その学生が、
「すみません、先生、ピザ、注文してください。」
とお願いに来た。ま、しょうがないよね。JTO、張り切ってピザの注文をした。
すると、
「先生も一緒に食べましょう。」
と誘ってくれた。誘わないわけにはいかないか(笑)。
JTOも少しお菓子を買って差し入れし、一緒にピザを食べた。うまかった。

日を変えて、次の「と」の導入もJTOだった。
軽く復習し、「と」の導入に入る。
用意したテープレコーダーにカセットを入れ、プレイボタンを押しながら、
「このボタンを押します。テープが動きます。→このボタンを押すとテープが動きます。」
・・・・なんか学生の反応にぶいような・・。気のせいかな・・・・。
次にテープの音量のつまみを回しながら
「このつまみを回します。音が大きくなります。→このつまみを回すと音が大きくなります。いいですか。では、はいっ。」
と全体合唱をしたとき、学生が「つまみ」と言えてないことに気づく。
ハッ。もしかして、新出語彙、忘れてるぅ?「動きます」も新出語彙。だからいまいち飲み込めなかったの?確かにおとといのことだけど・・・・いやーん。
でも気を取り直し、進める。
その後は問題なくできた。いつ「と」を使うのか、それも確認でき、ちょっと安心。

 
 
 第八十九話.忘年会。

今日はこの日本語学校の忘年会の日。いえーい。うれしいぜ。
学校全体・・・・つまり学生も先生も友達も、みんなカモン!の会費制忘年会。
各クラスから実行委員を募り、学生主体で行う忘年会。いいねぇ。そして各クラスで食べ物を用意することになり、JTOのクラスは「餃子」になった。JTOのクラスには台湾・中国の学生がいるし、主婦の学生もいる。心強いね。
前の日から準備を始める。この日はJTO、授業がない日だったが、学生と一緒に何かを作る、って楽しいことじゃない?ま、監督も兼ねてお手伝いをした。
買い物から一緒に付き合う。近くのスーパーで買う。JTOのクラスにそのスーパーを利用している中国人の主婦学生がおり、バリバリ仕切ってどんどん進めていく。・・・はぁ。すごいわ。
今度は教室で具を切り、混ぜ、皮に包む。
韓国の学生は初めてだったようで、台湾の学生に教えてもらいながら一生懸命作っていた。学生同士が日本語を使ってコミュニケーションをとるのを見るのが、妙にうれしかった。
さすが、台湾、中国の学生は包み方が超ウマイ。きれい。JTOも教えてもらった。
全部で何個作ったんだろう。200個か300個か。もう夜になっていたが、とうとう出来上がった。できたヤツをみんなで味見。他の先生が持ってきてくれたホットプレートで焼く。
・・・・んんんんん!んまい!
少し焼き、まだ事務所で仕事をしている先生がたにおすそ分けをした。
ここまでの分を片付け、作った餃子は非常階段の、ヒエビエしているところに保管。

そして次の日、授業を少し早めに終え、焼き方開始。
お昼開始の忘年会に間に合うように、どんどん焼いては会場へ運ぶ。
しかし今日は金曜日。JTO、例のプライベートレッスンがある日なのだ。しかもお昼に。
この学生、忘年会に参加しないという。ま、自由参加だから強制はできないけど。
念のため、忘年会と勉強とどちらがいいか聞いてみた。
「ベンキョウ」
・・・わかりました。がんばります。
レッスン中に「パン、パパンッ。」と、クラッカーの音が聞こえる。楽しそうな音楽が聞こえる。
・・・・ああ、始まったのね・・・・。・・・・歌歌ってる・・・。餃子、食べたいな・・・。
とレッスン中にもかかわらず、頭の中でこんなことがグルグルまわっていた。
そして無事レッスン終了。
忘年会会場へすっ飛ぶ。なんだなんだ、すごい熱気。まずは腹ごしらえ。何かあるかな。と探していると学生が「これ先生のです。」と持ってきてくれた。取っておいてくれたんだぁ。うれしいよぉ。
そしてがっつく。
忘年会は色々なゲームあり、ビンゴありで、面白かった。

今日で今年の学校が終わる。
当初、JTOのクラスは、20人中たった1人だけが進学クラスへ進むことになっており、あとはみんな、短期の留学生であり、本来なら、「今日が最後」の学生が大勢いるはずだった。しかし、そのほとんどが日本語の勉強を続けたい、と申し出、さらにビザの延長をし、学校に残ることになった。
・・・・これって、うれしいよね。すごいことだよね。少なくとも、日本の、この学校の、このクラスの環境は良かった、ってことだよね。もう少し言えば、ここの先生たちも悪くなかった、ってことだよね。
結局、20人中たった2人だけが、この学校から去ることになった。
そのうちの1人は1番最初にJTOがプライベートレッスンを担当した学生。この学生も本当はもっと勉強したかったようだが、親にダメだと言われたらしい。でも、
「夏休み、また短い勉強に来ます。弟と一緒に来ます。」
と言ってくれた。
学校を今日で辞めるこの2人の学生。この2人の学生はあまり学校に来ないほうだった。たぶんクラスの友達ともあまり話していないんだろうな、と思った。特にお別れ会もやらないらしい。
・・・・・ちょっと寂しい。なんか、かわいそう。
・・・・ん?・・・・・そっか、JTOが個人的にやればいいんだ。

 
 
 第九十話.3人だけのお別れ会。

例の2人の学生とJTOと3人でお別れ会をすることにした。
これはJTOから言い出した。
「3人で一緒にご飯を食べませんか。」
そのときの2人の顔は、とてもうれしそうだった。

そして当日。とても寒い日だったが、待ち合わせの新宿へ行くと、もうすでに学生1人が来ていた。もう1人の学生も新宿まで来ているのだが、道に迷いなかなか姿をあらわさない。
ようやく揃い、パスタのお店に入ってお昼を食べた。
お昼を食べながら2人に、これからどうするのか聞いてみた。
学生Aは国へ帰ることはわかっているが、学生Bの予定は知らなかった。すると、学校を変えるという。つまり、別の日本語学校へ転校するらしい。一旦国へ帰って、また来年出直してくるという。新しい学校の手続きも終わり、住むところも確保しているようだ。
理由を聞いてみた。・・・・なかなか口ごもって言わない・・・。言いにくいよね。
「つまらなかった?」こっちから聞いてみた。
「・・・はい。」
・・・・・やっぱり。そんな感じはしていた。気づいていたのに、何もしてあげられなかった。
彼女はJTOのクラスに入った当初から、「上のクラスに行きたい」と言っていた学生だった。それが受け入れてもらえず、半分あきらめの境地で学校へきていたのか・・・な。確かにあのクラスの中では上手に話せる学生だった。きっとプライドもあったんだろうな。
もう決めてしまったことは仕方がない。
とにかく今後、それぞれがんばるように励ました。

あとは色々な話しをし、場所を移動し、お茶を飲みながらたわいもない話を続けた。普段こんな風にほとんど話したことがなかったこの学生。話してみると、とてもいい学生だった。

別れるころには、もう外は暗かった。
それぞれ握手をした。JTOの視界がぼやけた。涙が出てきた。
JTOの最初の学生の、最初の別れだった。

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