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日本語教師JTO 担任編3 |
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第百三十六話.もっとドキッとした電話。 |
ある日曜日。
またしてもJTOの携帯が鳴った。
ん?今回初めてかけてきた女子学生だわ。
「もしもし、JTOです。」
「あ・・・。先生。こんにちは。」
「こんにちは。どうしましたか?。」
「あの・・・・おととい、わたしと友だちと一緒に・・・・事故がありました。」
「・・!!えっ?な、なに?ど、どうしたの?大丈夫?」
この時点でJTOはちょっとした接触事故だと思っていた。
「はい。でもちょっと大丈夫じゃない。足が痛いです。」
「どうしたの?もっと詳しく・・・。」
「わたしと友だち(同じクラスの学生=JTOのクラス)が横断歩道を渡っていました。そこで車とぶつかりました。」
ハヘッ?!それって、りっぱな交通事故だよね?
しかも一緒だった学生は前回バスケットボールで足を捻挫したばかりの学生じゃないの。
「大丈夫?病院へ行きましたか?学校に電話しましたか?痛いですか?」
「ちょっと足が痛いですが、大丈夫です。病院へ行きました。検査しました。まだわかりません。」
「月曜日、学校へ来ることができますか?」
「はい。大丈夫です。」
ホントかなぁ・・・。でもこうして電話できてるし、そんなに大きくなかったのかなぁ・・・。
心配しながらその日の眠りにつこうとしたとき、また携帯が鳴った。
「もしもし、先生。こんばんは。」
事故に遭ったもう1人のほうの男子学生だった。
「あ、大丈夫?どこか痛いですか?」
「はい・・。あ・・・。あの・・。わたしは頭が痛いです。」
あたまぁ?・・・・もしかしてコッチの学生のほうが重症じゃ・・・ない?
夜中だったし、となりでダンナが寝てるし、JTOは1人押入の中へ入って電話を続けた。
「頭をぶつけましたか?」
「実は、・・・よくわかりません。車とぶつかったとき、記憶がありません。」
・・・・ヤバッ。
おいおい、大丈夫かぁ?
気を取り直して、ちょっと聞いてみた。
「その日の授業、覚えていますか?」
「いいえ、ぜんぜんわかりません。」
アッヒャーッ!
「日本語もちょっと忘れました。でも今は覚えています。先生もわかります。」
事故のショックで記憶が抜け落ちているようだ。一時的なことだといいんだけど・・・・。
「明日、学校へ来ますか?大丈夫?」
「はい。たぶん、大丈夫。」
「じゃ、明日、学校でね。」
「はい。先生。すみません。」
・・・・ちょっと心配だなぁ。
そして次の日、彼らに会った。みるからに意気消沈って感じ。女子学生のほうは足を引きずり、顔色も冴えなくちょっとむくんでいるようだった。男子学生は目もうつろ。しかも松葉杖をついている。
事故の様子を聞きたかったが、本人達の記憶がないからあやふやのままだ。
とにかく。
横断歩道上での事故。
幸いなことに、ぶつけた相手がきちんと病院へ連れて行ってくれたり、警察へ連絡してくれたりしたようだった。そのあたりの事務手続きは保険屋サンが入って、しっかりしてくれたようだ。
でも心配なのは怪我である。
これからまだ検査があり、結果がわかるのはまだ先だという。
別のクラスの、日本語が上手な学生が通訳として一緒に病院へついて行ってくれた。怪我を負わせた人も一緒に。
なんともなければいいな・・・。
神様・・・・。
お願いします。
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第百三十七話.隅田川の花火大会。 |
都会に住んでいながら、隅田川の花火大会なんて行ったことがなかった。
だって。
すごい人なんだもの。
ところが今年は学生に誘われてしまった。
はい。行きました。
行くなら早めに行かなきゃ。
学生たちと相談し、3:00に両国で待ち合わせる。
さ、場所取りが大変だ。
最初、橋の上で見ようと思っていたら、
「花火大会はぁ〜、歩いてぇ〜見るものですぅ。ここに座らないでくださ〜い。」
と、警官が拡声器をもってぞろぞろと警備にあたっていた。
「先生、何?」
学生が心配そうに聞いてくる。
「ここはダメです。さ、別の場所を探そう。」
そういって学生達をひきつれて場所を探しに歩いた。・・・このときの学生の人数は10人くらいいたかな?知らない人もいるんですけど。
やっと、場所を確保し、あとは花火を待つだけになった。もちろん、まわりもすごい人。JTOたちは道路の上にいた。
始まる30分くらい前に、テスト花火?っていうの?打ち上げるよね。
あれが上がったとき、この場所では見えないことに気づいた。・・・・ショック・・・・。
「わーっ、先生ーっ。ここ、ダメ。見えないよ。」
でも待ちくたびれている学生が多く、もうここでいいいよ、っていうような空気が流れていて、その流れに乗ってしまった。もっともいまさら見える場所なんて座れるわけがないし。
「あっ、先生。こっち、見えます!」
ん?と思いながらその学生の示す方角を見ると、それはオフィスビルのガラス窓に反射した花火だった。
「これ、見る。大丈夫。大丈夫。」
・・・なんか、それでもいいかな、って思った。
でもこの花火を期待していた学生がポツリ。
「・・・先生。でも、このガラスの花火、本当の花火じゃないでしょ?」
そうなんだよね。そうなのよ。
でももう、みんなくたびれちゃったのよ。
そして花火大会が始まった。
ドドーン!
やっぱり見たいよね。
「全員、移動ーっ。」
みえるところまで動き、そこで見られた。
後にいた若い日本人の男がしきりに「すげーっ、すげーっ」を連発。
案の定、
「先生、『スゲーッ』は何?」
の質問が。
大会終了15分前に、引き上げることにしていたJTOたち。
帰りの混雑にあいたくなかったのよ〜。最後がきれいなんだけどね。
後ろ髪を引かれながら両国駅へ向かった。特に混雑もなく電車に乗れた。
そのあと、秋葉原で飲み会。
そこに他のクラスの学生も合流し、大賑わいでした。
実はこの日はJTOの誕生日。てへっ。
JTOのためにこんなに花火をあげてくれたなんて、うれしいわ。
でも今年の誕生日は最高だった。
色々な学生から携帯メールでおめでとうのメッセージをもらった。
本当にうれしかったよ〜っ。
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第百三十八話.葛飾の花火大会。 |
学校行事でもあるこの葛飾の花火大会。
去年も行ったっけなぁー。
去年はまだ養成講座の受講生という身分だったなー。
あれから1年。
いまやすっかりはまっているこの仕事。
なんだかイベントばかりで、ホントにおまえ授業してんのか?って突っ込まれそうだけど(笑)。
これは行きたい人が行くもので、特に強制的じゃない。
が。
今年は参加者が多いねぇ。しかも、女子学生はみんな、
ゆ・か・た。
そう、浴衣を用意してせっせと着替えてるじゃないの。学生の数人は自分で着付けができてるし、他の学生の着付けを手伝ってあげていた。・・・ホントに外国人?
JTOは少し恥ずかしかった。
実は前の日、母に電話して着付けの方法を確認していたんだけど、実際やりながらじゃないと、無理だよね。でも他の先輩先生に教えてもらいながら、学生達の着付けを手伝ってあげた。
「どうして先生は浴衣をきませんか?」
この質問、何人の学生に聞かれただろう・・・・。スミマセン。次回ね。次回。
葛飾の花火大会は土手っぷちで見られるため、視界を遮るものが何もない。こないだの隅田川なんて、ちょうどいいとこにビルがたっているんだものね。
もちろんすごい人だけど、ゆっくり花火が見られた。学生達も携帯のカメラで一生懸命花火を撮っている。
うん。いい花火だった。
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第百三十九話.スピーチ大会。 |
明日から夏休み。なんと1ヶ月もある。何をしようか、長すぎてわかんないほど、十分な夏休み。
その夏休みの前日には、学校恒例の「スピーチ大会」がある。
各クラスから代表者が出て、スピーチ。テーマは何でもOK。
ま、普通、スピ―チ大会なんてもんには、どちらかというと出たくないものよね。
他のクラスの先生方も、誰を出すかで四苦八苦していた。だからクラス内で一度スピーチ大会を開き、そこから学生がクラスの代表を決める、というやり方で選出していた。
しかし。
JTOのクラスの学生は、ちょっと違っていた。
スピーチ大会の話しをしたら、なんと、最初、5人ほど自ら「出たい〜っ」という学生がいたのだ。
JTOは逆に、この学生の中から選ばなければならなく、他の先生とは別の悩みを持つことになった。
とにかく、出たい人には原稿を書いてきてもらうことにした。
5分ほどのスピーチ。
みんな、書けるかな?
結局書いてきてくれたのは3人だった。この3人から選ぶことにした。
通常、クラスから1名の代表をだすんだけど、2名までOKということだったので、この3人から2人選らすことにした。・・・・これも難しいよね。
この3人にクラスのみんなの前でスピーチしてもらい、クラスの学生の投票で決めることにした。
もちろん、原稿を読みながらのスピーチでよかったんだけど、ある学生はすでに100%暗記してきて臨んでいた。・・・・意気込みが強いね。
「絶対、絶対、スピーチ大会に出たい!!」
といっていた学生。・・・・どうしてそんなに出たいんだろう。
その後、2人の代表を決め、練習を重ね、当日を迎えた。
AクラスからHクラスまで、1人ないし2人の代表。各クラスは代表者の応援もがんばる。
上級クラスの学生のスピーチとは比べられないけど、初級は初級なりにがんばっていた。
効果を上げるために絵や写真を用意したりした。
結果として、JTOのクラスは何も賞がもらえなかった。でも、スピーチした本人達はいい日本語の勉強になっただろうし、応援してくれたほかのクラスメイトもいい刺激になったのではないか、と思った。
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第百四十話.夏休み! |
わ〜い!夏休み。
ほとんどの学生は国へ帰るんだけど、何人かは残り、ホームスティプログラムに参加してみたり、補習授業に出てみたりと、充実した休みにしていたようだ。
以前、交通事故にあった学生も、その後の経過もよく、松葉杖もとれ、リハビリに通い、元気になった。・・・ホント、よかった。まだ100%の体じゃないのに、北海道のホームスティプログラムに参加し、いい経験もしてきたようだ。
休みの途中では、東京湾の花火大会があり、それに誘われ、今回は浴衣を着て参加した。
みんなに(浴衣が)きれいだきれいだ、といわれ、有頂天になったJTO。
花火の場所取りにも慣れ、時間つぶしには「UNO(ウノ)」を持ってきて遊んでいた。
ここで、今までJTOが学生からもらった携帯写真をちょっとご紹介!
携帯カメラって、ほんと、便利だね。JTOの携帯にはカメラがついてないのよ〜。
(あ、この文章、「には」の導入に使いました)
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お、おいしそう・・。 |
あら、いいわね。 |
これは東横線。 |
提灯、あるね。 |
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プリクラ、ですか。 |
富士山にて。 |
鬼怒川にて。 |
これ、造ったんだって。 |
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家族・・らしい。 |
函館の夜景。 |
中華街。 |
ぶどう。だよね? |
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あら、すいか。 |
れいんぼう。 |
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なぜか、とんかつ。 |
お台場。 |
まだまだ色々たくさん写真をもらったけど、こういうのって、うれしいね。
ほのぼのする。
でもJTOの携帯が古くて、時々すぐ見られない写真もあるのだ。・・・携帯、替えようかな・・・・。
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第百四十一話.授業開始。 |
夏休みが終わって、通常授業が始まった。
1ヶ月も学生と会えなくて、やぱり寂しかったよ〜っ。
みんな、元気に登校してました。
ただ・・・。
・・・・・国へ帰ってた学生。おいおい。大丈夫か。ちょ・ちょっと・・・日本語、後退してないか?
あらあら、教科書のひらがな、読めてないぞ〜っ!動詞の活用、できてないぞ〜っ!・・・涙。
新学期初日はボケた頭のリフレッシュのために、クラスで「ジブリ美術館」へ行った。
駅から美術館まで歩いたら20分くらいだし、お金も節約になるのに、このクラスは「バスがいい」と言っている。
1人妊婦もいることだし、日本でなかなかバスに乗る機会もないだろうし、ラクだし、往復バスになりやした。
・・やっぱりみんな、金持ち?
みんな、トトロと写真撮るのはいいけど、ちゃんと日本語覚えてる?
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第百四十二話.国際交流協会の講座。 |
以前紹介したことがあるが、JTOは国際交流の団体に所属している。といっても、ボランティアをしているだけだが、そこのシステムはきちんと整っており、とてもいい印象がある。
そこからお知らせが届いた。
日曜日を二回ほど使い、日本語教師の講座を開いてくれるという。もちろん無料。
対象はボランティアで教えている人、教えたい人。現役教師もいいという。早速申し込む。
内容としては、
・発音・イントネーション
・異文化コミュニケーション
が中心。
1日目。
横浜国大の先生がいらっしゃって、まずは発音・イトネーションについての講義だ。
しかし渡されたハンドアウトを見ると、少し見覚えがある。・・・むむ。これは日本語教育能力検定試験の聴解問題でないの!JTOが不得意とする問題だった。
アクセントやイントネーションは問題なかった。しかし「調音点・調音法」といった類の問題はどういうわけかわからない。でも、次の検定試験のための練習だと思いながら(まだ、合格してないのよ)がんばった。
次に異文化コミュニケーション。
いろいろなシチュエーションが書かれた小さい紙を渡される。たとえば
・あなたの家にフランス人がホームスティに来た。しかしぜんぜんお風呂に入ろうとしない。お風呂を 勧めるが一向に聞かない。
・あなたのクラスに新しい学生がきた。中国人だが、自己紹介をさせたとき、『私は日本人がきらいで す』といわれた。
・学生たちとバスでスキー旅行に行った。事前にスケジュール、注意事項等知らせたが、当日、高速 のトイレ休憩でなかなか戻ってこない。スクールにも入る予定だったが、ドタキャンしてみんなバラバ ラな行動をとる
など、10パターンのシチュエーションがかかれていた。そしてこの中で、どうしても許せないものを選びなさい、という、グループワークだった。
ボランティアの人が多いこの講座。まずは自分の価値観だけでなく、ほかの国の文化や価値観も勉強しよう、というものだった。
そして次に「会話文を作ろう」という作業をした。対象は「みんなの日本語」のTが終わった段階の学生。学生が切符売り場で切符を買う場面を想定して作る。
ここでは、既習の語彙確認、自然な日本語等、いろいろ考えなければならなかった。
これを次回までの宿題にさせられた。
2日目。
宿題の発表。が、JTOのグループでは誰もしてきてなかった。JTOはちゃんとしたよ!だって自分のためになるもの。だから、JTOのグループはJTOが作ったのを使って発表することになった。
みんなの前に出て、留学生と日本人の役をする。
・・・普段大勢の前で授業をしているJTO。自然に声が大きくなり、授業のような話し方になってしまう。これって、いわゆる職業病?
6グループすべての発表が終わった。そのあとみんなで検証。ダイアログもコピーし、この言葉はまだわからないだろう、とか、この言葉を使ったほうがいいのでは、とか、たくさん意見が出た。
その中である人が、JTOのグループの会話文は上手だった、と誉めてくれた。留学生が話す言葉や、日本人が説明する言葉が自然だ、というのだ。
・・・・ま、あたりまえだよね。だってJTO、毎日こんな会話してるんだもん。
でもこれは着実に、日本語教師としての経験を積んだ結果だろう。改めて自分を振り返れた。
今回受講していた人の中に、若い女性が一人いた。まだ大学生だが、某日本語学校で養成講座も受講している、という。教育実習が近いから緊張している、といっていた。
がんばって!
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第百四十三.また遊ぼうね。 |
9月に授業が始まったが、今月いっぱいでこのクラスとはお別れ。10月からはまた新学期がはじまり、クラスわけのテストをし、それぞれの新しいクラスで勉強することになる。
JTOのクラスでは、二人が帰国することになっていた。一人は出産のためで、一人は家庭の事情により、帰国。ほかの学生たちは引き続き勉強を続ける。
まだ初級の文法が完全に使える状態ではないが、それでもずいぶん話せるようになったなぁ。
初級って、これが目に見えてわかるから好きだ。
しかしみんな、10月1日のクラスわけテストのことが気になるらしい。
どんな問題がでるのか、だの、作文はあるのか、だの、授業そっちのけで聞いてくる。
そりゃレベルが高いクラスに行きたいだろうけど、実力、ってもんがある。上のクラスに行ってもついていけなかったらどうしようもない。JTOとしては着実に基礎を固めていってほしかった。
またクラスわけしても廊下などでみんなに会えるし、クラスによってはもしかしたら授業を担当するかもしれない。だからそんなに寂しくはなかった。
とてもクラス全体が仲良かったJTOのクラス。
元気だけど、びっくりすることも多かったJTOのクラス。
初めての担任のJTOのクラス。
いろいろな思い出が頭をよぎり、少しウルウルしてきた。
みんな、ありがとう。また遊ぼうね!!
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JTO担任編4へ |