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日本語教師JTO 担任編4

 

第百四十四話

新学期!新しいクラス。

 

第百四十九話

秋の遠足!

第百四十五話

中級のクラス。

 

第百五十話

中級の文法の授業。

第百四十六話

漢字クラス。

 

第百五十一話

ランチを食べに。

第百四十七話

初級クラスの学生。

 

第百五十二話

日本事情「宮崎駿の世界」

第百四十八話

プライベートレッスン。

     
 
 第百四十四.新学期!新しいクラス(2003.10〜)。

10月1日。
今日から新学期が始まる。今回はSARSの影響もあり、多少少ないようだが、それでもいつもとほとんど同じくらいの新入生が入学してきた。
もうすでにJTOが担当するクラスは決まっていた。
前回と同じ、初級の下から二番目のクラス。アイウエオや簡単な会話はできるだろうと思われるクラスだ。
入学式に、またしても通訳として出席。あ〜ん、そろそろボロボロになってきてるよぉ〜。
でもこの通訳をすると、大体自分のクラスに入る学生がわかるのだ。
今回はめずらしく、欧米系の学生がいた。時々「アメリカ国籍の台湾人」や「オーストラリア国籍の香港人」などいるが、今回は見た目?も欧米人、という学生が二人いた。いわゆる非漢字圏の学生だ。
JTOが英語で説明するが、ちっと恥ずかしい。

入学式をしている間に、在校生はクラス分けテストをする。その後、新入生もテストをし、点数をだし、全部合わせて点数順に並べ、クラス分けをしていく。
でもテストの点数がよくても会話力等、担任の先生が総合で判断し、「この学生は上のクラスに行ったほうが伸びる」とか「ペーパーはいいけど、もう少し基礎をつけたほうがいいから下のクラスヘ」など、吟味する。
クラス分けの作業をしながら、自分のクラスはどうかな、と横目で見る。
ほとんどが新入生だが、3人ほど上のクラスに上がれなくて同じ初級をもう一度する学生がいた。

そしてとうとう、JTOのクラスが決まった。
これが!これがっ!す、すごい!
前出の欧米人が二人、入っていた。
ざっと国籍をいうと、韓国人・台湾人・香港人・アメリカ国籍の台湾人・シンガポール国籍のオーストラリア人・ドイツ人・アメリカ国籍のキューバ人・フィリピン人。
いや〜っ、国籍豊かだわぁ。しかも、14人の学生中、男性が10人!!これもめずらしいのよ。
面白いクラスになりそう。

 
 
 第百四十五話.中級のクラス。

JTOは初級クラスの担任。もちろん授業も受け持つ。
それ以外の授業としては、またしても中級クラスを持つことになった。
前回は初中級(初級が終わったばかりのクラス)だったが、今回はその上のクラス。
どんなクラスかな、と思っていたら、なぁに、前回受け持っていたクラスの学生が、そっくりそのまま、全員いるじゃないの。そこに数名、新しい学生と、初級から飛び級してきた優秀な学生が混ざっていた。見慣れた顔がたくさんあって、ちょっと安心。

しかし安心したのもつかの間、このクラスでのJTOの授業はなんと!
日本語能力試験対策の文法だった。
・・・・できるかしら、JTOに。
確かに最近、文法を教えていて楽しいと思うようになってきた。どうしてだかわからないけど。
とにかく、12月に迫っている日本語能力試験の文法をやらなければならない。
・・・今は10月。試験は12月。あと2ヶ月。
あと2ヶ月で、2級と1級の文法やれってか。こりゃこりゃ大変だ。
このクラスはほとんどの学生が1級を受験する。だから1級をメインに勉強しなくちゃいけないんだろうけど、なんせ試験のための文法の勉強なんてはじめてする学生達だから、2級から順にしなければ、1級文法なんてとけるわけがない。
試験までの計画を立てたが、単純に10月で2級を、11月で1級を終わらなければならない。
こ、こ、これは・・。
超スピード授業になるのか?
それでいいのか?
でもやるしかない。
学生にとっても、JTOにとっても、緊張した授業になるだろう。

 
 
 第百四十六話.漢字クラス。

JTOはもうひとつ、授業をもつことになった。
それは「漢字クラス」。
対象は中級以上の学生。
教科書だけでは足りない漢字を補うためのクラスだ。
使うプリントは、日本人用の漢字検定のテキスト。

これも対象学生全員がクラス分けのテストをし、レベルに分かれる。一番下のクラスは漢字検定8級を勉強する。上は3級まで。
そしてJTOが担当するクラスは一番下、8級クラスになった。
漢字のクラスはいろいろなクラスから集まってきているから、学生も友達が増えるし、JTOもまだ話したことがない学生とも知り合えるから、ちょっと楽しい。

8級の漢字は、大体小学校3年生くらいが対象だ。出てくる漢字も、そんなに難しくない。
しかし。
例文が難しいのだ。
例えば
1.読み方の問題で
少数の人の考えしても、しかりをかたむけよう。それが自分に進歩をもたらす。
がある。下線の部分の読みを書く問題だが、読み方は問題ない。もう習って、知っている漢字だ。
でも文全体の意味となると、「〜に対して」「耳をかたむける」「進歩をもたらす」など、漢字以外のところの説明が必要になる。これがなかなか難しい。
8級の漢字クラスにいる学生は、そのほとんどが初級を終了したばかりの学生だ。
漢字の勉強以外にも覚えなければならないことが増えてしまうのだ。
う〜ん、覚えなくてもいいのかなぁ。でもできれば文全体での意味で覚えてほしいしなぁ・・・。

とにかく、がんばってみよう。

 
 
 第百四十七話.初級クラスの学生。

なかなか国際色豊かなJTOの初級クラス。
やはり非漢字圏の、二人の白人学生が非常に目立っていた。
その中のドイツ人学生は背が190cmはあり、それだけでも目立つのに、爽やかなあごひげもたくわえていた。
もう一人のキューバ人学生は、背はさほど高くないが、これまた、ドイツ人学生に負けないくらいあごひげをたくわえ、パイプでタバコを吸っている。この学生、大学教授。哲学専門。趣味は精神分析。
ははは。分析されてたらどうしよう。
この2人はよく教室の前で話している。だからなおさら目立つ。
ほかのクラスの学生達も珍しいそうに遠目で彼らを見ている。
・・・JTO、ちょっと、ちょっとだけ優越感。
でもJTOのこのクラスのアジア人学生達も同じ思いを持っていたようだ。そりゃそうだわよね。
かつてJTOがカナダの語学学校にいたときも、ほとんどが日本人と韓国人。たまーにメキシカン。
珍しくイタリア人やドイツ人と一緒になると、それだけで国際人になった気がしてたもん。
だからその気持ちって、よ〜くわかる。

でもJTOは少し心配なことがあった。
国際色豊かなJTOのクラスだが、それでもアジア人が圧倒的に多い。そんな中で、この白人学生達が話す機会を失ってしまったり、うまくコミュニケーションがとれなかったりしたらどうしよう、とちょっと心配していた。しかも初級だからどうしても同じ国同士で情報を交換しがちになる。
ちゃんと授業についていけるか、漢字は大丈夫か、クラスメイトとコミュニケーションが取れるか・・・

しかしこのJTOの心配はむだだった。
最初はやはり非漢字圏の学生同士がかたまり、英語でやりとりしていたが、そのうち、その境界線がなくなり、自然にみんな溶け込み、きちんと日本語で話していた。特にこのドイツ人学生、非常にユーモアがあり、おもしろい。とてもいい冗談を言って盛り上げてくれる。

今、教室内の椅子と机は「コの字型」になっている。月に1回席替えをしているんだけど、なんてやりやすいの!同じ国同士の学生が隣り合うことがない。いいわぁ〜。いいわぁ〜。

 
 
 第百四十八話.プライベートレッスン。

JTO、もう1つクラスを持つことになった。
1対1の、プライベートレッスン。
もう1人の先生と交代で、週2回持つことになった。
その学生は去年、JTOが養成講座後初めて担当したクラスにいた、フィリピンの学生だった。
ご主人が日本人で、結婚で日本に来た学生だった。だから基本的には生活に必要な言葉を中心に勉強できればいいのだが、クラス授業に参加し、一生懸命ほかの学生と一緒に授業を受けていた。
しかしだんだん遅れ、ついていけなってきていた。そこでクラス授業ではなく、1対1の授業を勧め、プライベートレッスン方式で授業をすることになったのだ。

この授業のJTOの担当は会話。
とにかく今まで初級でならった基本会話を使い、なるべくこの学生が遭遇するであろう状況にあてはめ、練習をしていった。うまくできなければ、また次回同じ練習をする。できなければまた次回・・・。
これがプライベートのいい所。しかも媒介語(このときは英語)もちょっと使えるから、理解力が早まる。
「センセイ、コノ授業、イイネ。イイネ。」
学生も気に入っているようだ。よかった。

 
 
 第百四十九話.秋の遠足!。

毎年恒例、秋の遠足の時期になった。
いえ〜い、うれしいな。
今回は、「鎌倉」。
ハイキングとお寺散策と、2つのコースから選択できる。でもJTOのクラスは初級ということもあり、全員同じコースにした。お寺散策コース。
寺ばっかでつまんないかな・・とちょっと思ったけど・・・・。

まず東京駅に集合。横須賀線ホームに直接集まる。
ぞくぞく集まる。JTOのクラスの名前は「Hクラス」。「H」と書いた紙を作り、例のドイツ人に持たせ、集合場所にした。
乗る電車の時間は決まっていて、遅刻した学生はあとから自力で鎌倉までこなければならない。ま、当たり前か。んで、JTOのクラスに、2人、いた!
時間になっても現れず、連絡もとれず、やきもきしていた。
そのうちの1人から連絡が入り、遅れるという。その学生とは随時携帯メールで指示することにした。しかしもう1人の学生は携帯をもっていない。な〜んにも連絡ができなかった。

とにかく予定通りに出発。そして無事、北鎌倉の駅に到着。みんな仲良し。
この駅は小さくて、改札も狭い。ましてや学生達がノタクタと動いたり、清算するのに時間がかかったりで、改札を出るのに時間がかかった。でもこの時間のおかげで、あの連絡が取れなかった学生が追いつき、合流できた。
改札を出たところでは学生達であふれ、交通の邪魔にもなっていた。クラスをあつめなきゃ、思い、ドイツ人学生にさっきの「H」の紙を頭の上に持ってもらおうと歩み寄った。しかし・・・。
「センセイ、ゴメンナサァイ。電車ノ中ニ忘レマシタ。」
・・・・うっ。・・・ま、いいか。今ごろ横須賀線の網棚に「H」と書かれた紙が、寂しく横たわっているんだろう。

最初は駅近くの寺「円覚寺」。
ダラダラ歩いていたらもう1人の学生から連絡が入る。
「センセイ、今、北鎌倉デス。ドコデスカ。」
「駅を出ます。すぐ近くに『円覚寺』が・・・・。」あ、読めないか。
「お寺の名前は「円」。百円の「円」。「覚」は・・・・。」うっ説明できない・・。
すると電話の向こうから
「ア、ワカリマシタ。今、行キマス。」
「階段があります。わかりますか。入り口で待ちます。」
「ハイ、・・・ア、センセイ。」
という言葉と同時に階段を走って登ってくる学生を発見!よかったぁ。これでみんなそろった。
・・・・・・・ん?おや?あれ?
1人じゃないぞ。
「センセイ、アノ、ワタシノカノジョ。イイ?」
・・・・いいも悪いも、連れてきちゃってるんだからしょうがないでしょう・・。
「いいよ。・・・・こんにちは。JTOです。」
と、その学生の彼女に挨拶する。彼女も留学生だった。なかなかかわいい子。日本語も、まあまあかな。・・・それにしてもこの彼女、どこかで見たことがあるぞ・・・・。
・・・・・!!!
あっ、近くのローソンでバイトしてる子だ。なんだなんだ?どうなってんの?
とにかく、みんな合流できてよかた。遅れてきた例のカップルはもうラブラブでデート気分。

大仏ゥ〜。それからは特に問題なく寺巡りをしていった。
寺ばかりでつまんないかな、と思っていたけど、結構みんな楽しんでいたようだった。
お弁当も食べた。
フィリピンの学生はフィリピン料理を、韓国の学生は韓国料理を作ってきてくれた。
そのあと、お決まりの「大仏」。みんな思い思いに写真を撮ったり、お土産を買ったりしていた。
そして鎌倉の海へ、夕焼けを見に行った。例のカップル学生は海辺を走りながら、
『つかまえてごらんなさい。』
『こいつぅ。』
とでも言っているかのようにラブラブ状態だった。


この海岸で解散だったのだが、JTOのクラスは横浜で飲み会をすることにした。
参加できる学生だけ参加した。気づいたら見たことがない学生も混ざっていた。でも、日本の居酒屋ははじめて、という学生が多く、食べ放題、飲み放題というものがあるのにも驚いていた。
そこにはカラオケもついていて、カラオケ好きの学生が早速歌い、大盛り上がり!

みんな、お酒が入るとホント、日本語上手になるよね。

最初はどうなるかと思ったけど、とても楽しかった遠足だった。

 
 
 第百五十話.中級の文法の授業。

12月の能力試験対策の文法を担当している。
前も書いたが、2ヶ月で2級と1級の文法をやらなければならない。とくにこのクラスは、クラスのほとんどの学生が1級を受験するから、1級は何が何でも終わらせなければならない。
とにかくやる。本当ならその文法を使って短文でも作れればよりいいのだが、そんな時間すらない。予定では試験の直前に1級の文法が終わることになっていた。
もちろん学生自身も家で予習・復習をやっている。
普段ならそんなことはしない彼らだが、今回ばかりは目の色が違っていた。
普段は遅刻してくる学生も、この授業では最初から席に座っていた。私語もなく、教室の空気も張り詰めている。
そのうちきちんとやっている学生とそうでない学生の差がはっきりと見えてきていた。

ある日、授業中に携帯が鳴った。
ここの学校では授業中に携帯の着メロがなることはほとんどない。みんないい子で、きちんと電源を切っている。しかし、休み時間などに使って、切り忘れるときもある。その日はたまたま、そんな学生がいた。
その学生も「あ、すみません。」ときちんとあやまり、バツの悪そうな顔をしていた。
しかし。
あるクラスメートが「ちょっと!電源きってよ!何してんの!」とどなった。この学生、普段こんなことは絶対言わない学生だっただけに、JTOも他の学生もちょっと驚いていた。
さらにもう1つ。
もう授業時間も終わりに近づいてきたころ、あるが学生の飲み物のペットボトルをいじっていて、それが「ベコベコッ」と鳴ってしまった。そしたらさっきの学生がジロリとにらみ、「はぁ〜っ。もう!」と大きい、いやみなため息をついた。
・・・ちょっと非常にピリピリした空気なんですけど。
でも本人にとってはそれくらい大切な授業であり、なんとしても1級に合格しなければならないプレッシャーもあったんだと思う。
JTOもそれに答えなくちゃいけない。事前の授業準備も念入りにする。
でもこの授業をやってよかった。
JTO自身、少し自信がついた。いいチャンスをもらってよかった。

 
 
 第百五十一話.ランチを食べに。

JTOが担任をしている初級クラスのみんなと一緒にランチを食べにいった。
クラスメートのほとんどが出席してくれ、一緒に担当している他の先生も行くことができ、大勢でパスタを食べた。
このとき、たまたま目の前に座った学生と話した。この学生、あとから少し遅れてこのクラスに入ってきた学生だったため、JTOもあまり話したことがなかった。これはチャンスと、色々話した。
普段おとなしい印象があったのに、話すとシャベレル。教室授業だけではわからないものだな、と改めて思った。
さらに隣に座った学生は普段ちょっと休みがちの学生だった。この場にいることが珍しい。でもこの学生もしゃべるしゃべる。団体が苦手な学生も、個人になると話せるものなんだ・・・・。
もっと一人一人と接する回数を増やして、その学生の個性や能力が引き出せたら・・と感じた一日だった。
そのあと?
残ったメンバーでカラオケに行きました。

 
 
 第百五十二話.日本事情「宮崎駿の世界」。

JTOにとって2回目となる日本事情のクラス。
今回も「宮崎駿の世界」を担当した。
与えられた時間は10時間。最初の1時間で軽く作品と宮崎駿について説明。
最後の3時間はジブリ美術館に行く。だから残りの6時間をどうするか、直接学生に聞いてみた。
するとみんな、「作品をたくさん見たい!」と言った。それならバンバン見ましょう。
アンケートを取り、作品3つを選ぶ。
意外と、「ナウシカ」や「ラピュタ」は人気がない。というより、みんなすでに見てんのよね。
色々話し合った結果、1つ、JTOのお勧めを入れた3作品が決まった。
・「ルパン三世カリオストロの城」
・「紅の豚」
・「火垂るの墓」
JTOのお勧めは「カリオストロの城」。でもみんな知らなかった。1人、ややオタクが入っている学生だけが知っており、いい作品だ、と言ってくれた。あとは学生が決め、これを順次上映することにした。
中級レベル、とはいえ、まだまだ難しい。でも言葉はよくわからなくてもその物語の全体の意味は分かる。それでいいと思った。
この3作品で一番反響があったのは「火垂るの墓」だった。関西弁だったのであらかじめ簡単な文法説明をした。「食べへん=食べない」など。
でも関西弁だったにもかかわらず、みんな食い入るように見ていた。
教室の電気を消して見たのだが、上映が終わって電気をつけたとき、JTOはびっくりした。
男性数人が泣いていた。しかも、号泣。
みんな慌ててトイレに駆け込んでいった。・・かなり、くるものがあったのね。

そしてお決まりのジブリ美術館。
相変わらずこれは人気がある。この授業を取っていない学生も参加し、20人近くの団体で出かけた。
みんな、喜んでいた。
うんうん、満足。

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