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JTOタイトル

日本語教師JTO 新米教師編1

 

第五十九話

新米教師「JTO」誕生!

 

第六十一話

初めての授業。

第六十話

入学式。

 

第六十二話

第1課。

 
 第五十九話.新米教師「JTO」誕生!

養成講座が終わっても、まだ学校へ通わなければならなかった。
まずは来年度についての会議出席。新入生が何人やら入学式の時間割やら色々と話があった。ベテラン先生方はもういつものことなんだろうけど、Martyにとってはなにもかもが初めてのこと。授業だけでなく、学校がどのように運営されているのかがわかるワンシーンだ。ちなみに2002年10月の新入生は約60名。全校生を併せると約150名だそうだ。これが日本語学校にとって多いのか少ないのかは分からない。しかし、今7クラスあるのを9クラスまで増やさなければならないことは確かのようだ。うん、いいことよね。そしてMarty含めて3人の新しい先生が入った。
校長先生から改めて紹介された。
自己紹介するが、もうすっかり顔見知りになっているベテラン先生方がやさしく微笑んでいらっしゃる。
ここでMarty、ようやく日本語教師になったんだな、と実感。
これからはMartyあらため、「JTO」で行くことにしよう。うん。

そして以前予告があったとおり、Martyが担当するクラスは初級クラスとなった。しかも、超初級。もしかしたら「あいうえお」が読めない学生も含まれているかも・・・・なんて色々想像していた。
Mar・・・・JTOの担当する時間割ももらった。これも予告どおり、月・水・金の週3日だった。ホント、逆に気をつかってもらっちゃってる気がした。それゆえ、月並みだけどしっかりがんばります。

その後、新しい先生3人と教務主任の先生とで勤務に関する詳細事項の確認を行った。
・給料の振込み用の講座を開くこと ー 1番うれしいぜ。
・出席簿のとり方 − これは日本語学校にとってとーっても大事なもの。遅刻の数え方など。
・授業終了後、やった内容をノートに書くこと − 引継ぎには大事だね。
などなど。

この学校では先生4人が1チームを作り、1クラスを受け持つことになっている。他の学校はどうなんだろう?ま、とにかく、ここでも気を使っていただいちゃったことがあった。
やはり授業の前には教案を作り、それをチェックしてもらわなければ、まだまだJTO、1人で授業はできない。そこで、このチームの中に養成講座担当の先生を加えてくれたのだ。授業の前の日に教案を作り、それを担当の先生にチェックしてもらうことができる。・・・・・担当の先生だってこのクラス以外にも授業を持っているし、しかも専任の教師なので雑務にも追われている。にもかかわらず、こんなお荷物を引き受けることになってしまって、本当に申し訳ないと思っている。ここであらためてお礼を言いたい。
「本当にありがとうございます。でもまだお世話をかけます。よろしくお願いします。」

こんなにも期待され、面倒見てもらって、JTOは幸せものだ・・・。

と、感傷に浸っているばかりじゃだめ。やることはたくさんある。
目の前に迫っている入学式。ここでは新入生含めた在校生全員が「プレイスメントテスト」を受けなければならない。クラス(レベル)分けをするのだ。そのテストのあと、教師全員で解答チェック。その後点数順に上から(もしくは下から)分けていく。ちなみにこの学校は進学科があり、そのクラスの学生はテストはない。
新入生は入学式をし、オリンテーションを受け、そしてテストを受ける。次の日には自分のクラスが分かり、新しいクラスで授業を受けることになる。
こんな話を聞いていて、JTOもカナダの語学学校で初日に受けたプレイスメントテストを思い出した。文法や作文があり、インタビュー=面接も受ける。これは日本語学校でも同じだ。
当日何か手伝うことがないかと聞いてみる。特にないとのこと。見に来るのはかまわないので、入学式の様子だけでも見ようと思っていた。テストの解答チェックはまだ無理だし・・・。
どっちにしろ午後、クラス分けが終わった段階で新しいクラスの先生方が集まり、授業の計画を立てることになっている。逆にクラス分けが終わらないと何もできないのが現実。
どんな学生がいるのか、日本語レベルはどれくらいなのか・・・・。なんだかドキドキしてきた。

そうして入学式を待つばかりになった。

・・・・おやっ?おやおやっ?
もらった時間割をよーく見てみる。JTO担当のクラスの第1日目の第1時間目の教師が、JTOになってるぅ〜っ。ホントに1発目だぁ。しかも相手は日本語超初心者。
せめてひらがなくらいは分かる学生たちだといいな、と祈っていた。

そんなんしていると、校長先生が声をかけて来た。
「JTOさん、明日、お仕事お願いしてもいいでしょうか。」
おおっ、いいぞ。もちろん、OKした。が、一体何をするのだろう。
「え〜、明日の入学式の時、学校のルールなどの説明をするんですが、その時いつも学生に通訳をお願いしているんですよ。とろこが英語を頼んだ学生と連絡とれなくて・・・。
・・・JTOさん、英語の通訳お願いできますか。」
「ええっ?あ、あの、他の先生で、英語が達者の先生がいらっしゃるんじゃぁ・・・・・。」
「ええ、そうなんですが、明日はテストの試験監督なんですよ。」
校長先生ったら、こんなJTOに通訳を頼むなんて、なんて無謀な行為。はっきり言って自信がなかった。でも困っているからこんなJTOに声をかけてきたわけで・・・・・。
知り合いの社長さんがいつも言っている言葉を思い出した。
「何かを頼まれたら絶対引き受けろ。逆に私にやらせてください、と言わないとだめだよ。
これはみんな、自分の経験になっていくんだから。」
・・・そうだよね。自分のためにもなるし、やってみようか・・・・。
「・・・やらせていただきます。がんばります。」

その後、入学式で新入生に配る「入学の手引き」みたいなものを受け取る。
「そんな一字一句通訳しなくてもいいですよ。大事なところだけ押さえてくれれば。」

その日の夜、冊子の文章を見ながら、分からない単語を調べた。頭の中でだが、全部訳してみた。なんとかなるかな。

 
 
 第六十話.入学式。

さあ、入学式。まるで自分が入学するかのような、そんな気持ちで学校へと急ぐ。入学式の時間は少し遅いのでその時間に合わせていくと、もう他の先生方はテストの監督へ行っており、だれもいない。ちょっとどきどきしながら、時間になるのを待っていた。
そして時間になった。
ホールがある階に着く。目の前には新入生がざわめきあっていた。新入生が座っている場所は、すでに国ごとにわかれており、その前に通訳の在校生が立ってスタンバイしていた。
今回英語の通訳が必要なのは3人。フィリピン・ベトナム・イスラエルからの学生だった。その3人は後ろのほうにかたまって座らせられていた。内心、3人だけだったのと、その学生のそばでの通訳だったのでホッ。
最初、「入学の手引き」の内容だけを通訳すればいいと思っていたのだが、校長先生の挨拶、理事長の挨拶もあり、急遽、同時通訳もすることになった。
「みなさん、こんにちは。日本へようこそ。」
校長先生がこう言うと、その後同時に通訳担当の在校生が中国語・韓国語で通訳し始める。JTOはコソコソッと
「Hello.Welcome to Japan.」
などど訳してみたりした。初めて同時通訳をやったが、なかなか大変。JTOの英語力もかなり落ちており、自分なりに短くして同じ内容を新しい文に考えなおしての通訳になった。
その後「入学の手引き」の説明や、学生カード用の個人情報を用紙に書くのを手伝ったりと忙しかった。保険などの大切な部分はキチンと説明し、あとはJTOのペースでおおまかに説明してあげた。
・・・・JTOはふと思った。
この3人。JTOの通訳が必要、ということは日本語がまったくダメということ。と言うことは日本語初心者。ということは・・・・・JTOのクラスぅ?むむむ、可能性大。

この英語の通訳が必要な新入生。こんなJTOのそまつな英語だったにもかかわらず、とても感謝してくれた。フィリピン、ベトナム、イスラエル。この学校には彼らと同郷の学生は1人もいない。そりゃ、心細いよね。
だんだん慣れてきて、雑談などもできるくらいになった。と、そのとき、先生方の紹介になった。順に専任の先生がたが紹介されていく。その先生方の名前も通訳して教えていると、
「JTO先生、どうぞ前へ。」
と校長先生に手招きされてしまった。いいです、いいです、と手をふったが、どーぞ、と言われ、
「JTO先生です。今、英語の通訳をしてくれています。この先生はこの学校の養成講座出身です。」
とまでつけて紹介してくださった。
いやーっ。そんな、こんな、紹介されちゃったよぉー。紹介されるほど立派じゃないのにぃ。申し訳ないなー。と、赤面だった。

その後、すぐインタビュー。新入生の日本語の会話力のテストだ。ここでも先生不足で、またもやJTO、面接官になってしまった。用意された質問用紙を日本語で聞き、答えてもらうと言うもの。
例の3人組に聞いてみる・・・・・・・・。というより、日本語がまったくダメなので、質問できず。JTO、なぜか英語で質問する。どのくらい勉強したのかなどは、簡単に教えてもらった。
もう決定的に初心者クラスだわね。
彼らはペーパーテストを受ける必要もなく、帰宅となった。
ちょっと他の学生に目がいった。ぜったい10代だろう、と思われる学生。先生がその学生にインタビューしている。
「名前は?」「・・・・・・・・。」
「い・つ・に・ほ・ん・へ・き・ま・し・た・か。」「・・・・・・・・・・・」
・・・・・あの子もきっと初心者クラスだわ。

その後、新入生のプレイスメントテストをするため、面接が終わった学生から教室へ移動し、ペーパーテストを受ける。なぜかそこでもJTO、監督になってしまった。最後の学生が終わるまで、ただひたすら教室を行ったり来たり。そしてようやくプレイスメントテストが終わった。

ふ〜っ。なんだか、結局仕事をした感じ。でもやってよかった。入学式というものもわかったし、インタビューの形式、テスト監督と、いっぺんに味わえた。たぶん、あの3人組+10代君にまた明日会うんだろうな、と思いながら・・・・・・。

おっと、まだ終わっていなかった。
これからやっと、本来のクラス分けになるのだ。お昼を食べている間に、大体テストの採点ができあがっていたのには驚いた。それらのテストを点数順に並べていく。ざっとわけ、1人1人のレベルをその担任の先生に聞きながら、分けていく。・・・・・これは地道な作業だ・・・・。
そうしているうちに、作業が終わった。
JTOのクラスは全員が新入生。例の3人組+10代君もしっかり入っていた。4人1チームの先生が集まり、学生1人1人の名前やバックグラウンドを確認。ようやくクラス全員の名前等がわかった。
そこで、先生方、大変なことに気が付く。この超初心者クラス。「あいうえお」が書けない、読めない学生がなんと、6人ほどもいたのだ。通常は自分の国で、せめて平仮名だけは勉強してくるものなんだそうだが、今回は異例のようだ。このクラス、2つに分けることができそう。

同じチームのベテラン先生も、ちょっとどうしようか思案中のようだ。そんなこといっても、JTOは明日、1時間目にこのクラスで授業をしなければならない。一体何をすればよいのやら。教科書もまだない。それ以前に読めないけど・・・・。最初の授業って、大事だよね。新入生にとって、日本の第一印象がきまるとこだもんね。・・・・どうしよう。

カナダの語学学校にいたときを思い出す。・・・・そういえば最初は名前だよね。厚紙を三角形にして、名前を書いて、机の上に置いて・・・・・。漢字ならいいけど、例の3人組はカタカナで書かせなくちゃいけないよね・・・・。そっか、学生の名前の読み方が必要だね。韓国人は韓国語の音。台湾人は日本の音をあてて・・・・・。分からないのは学生に発音してもらってそれをあてればいいか・・・・。色々考えた。

さ、あとは明日。ドキドキ、ワクワク。いい緊張だ。

 
 
 第六十一話.初めての授業。

新入生にとっても、JTOにとっても初めての授業。記念すべき第一日目の第一時間目。
緊張しながら教室に入る。ドアを開ける。と、ギリギリまで学生の机がきていて、ドアの反対側にある教卓まで、「ごめんなさいね。」と言いながら突き進む。教卓へ着く。学生の顔をよーく見る。みんな、JTOをじーっと見つめている。
「おはようございます。」
「・・・おは・・おはようござい・・・ます。・・ます。・・」
バラバラと返ってくる。もう一度、
「おはようございます。」
今度は、「おはようございます。」ときちんと返ってきた。
そしておもむろに、ホワイトボードにJTOの名前を書く。とりあえず漢字にひらがなのふりがなをふる。
学生がノートにJTOの名前を書き始める。あいうえおがわからない学生が何人かいるが、この場ではなんともしょうがない。
「JTO です。わたし。わたし(といいながら自分を指差す)。わたし は JTO です。どうぞよろしく(といいながらおおげさにお辞儀)。」
そして出席。事前に学生の呼び方を考えてはいたが、名前を顔の確認と、最終的な呼び方の確認も必要だった。1人1人名前を確認していく。このとき、Aさんの呼び方を確認した後、学生全員で
「Aさん。こんにちは。」と合唱させてみた。口をうごかさなきゃね。・・・・そしてこのとき、養成講座担当の先生が教室の後のほうでJTOの授業を見学。むむむ、緊張。

その後、名前カードを書かせる。
長方形の厚紙を配り、三角形になるように折らせ、そこに自分の名前を書かせる。油性ペンを用意し、それぞれ書かせた。
ここでJTO、これから起こる失敗には気づいていなかった。この段階で、この油性ペンとホワイトボード用のペンをごっちゃにしてしまっていたのだ。・・・・ご経験がおありの方はもう気づかれましたか(笑)。
そしてその後、学生に
「わたしは○○です。どうぞよろしく。」
と言う練習をさせる。とりあえずホワイトボードにも板書しておこう、と、サクサク書いていった。書きながら、ん?このペン、ちょっと細いような気がするな・・・。と感じていた。そして最後まで書いた段階で、JTOは気づいた。ホワイトボードに油性ペンで書いてしまったことを!!
おどおどしなががら黒板消しで試してみる。ははっ。消えるわけがねぇ。やっべー。
この動揺を隠しながら学生の自己紹介を続けていた。すぐ消さなくてもいい文だったので、しばらくはそのままにしておいた。
丁度休み時間になった。JTOは速攻で事務所へ行き、除光液かアルコールのようなものはないか、たずねた。エタノールを借り、ゴシゴシしてみる。アセルJTO。・・・あ〜ん、あまり落ちないーっ。水のほうが落ちるかも、といわれ、ふきんを濡らしゴシゴシ。1つずつ落としていくが完璧には落ちない。うっすらと字が残っている。休み時間とはいえ、まだ学生達は行き場がない。JTOがバタバタしているところを不思議そうに見ていた。・・・・・はぁ、やっちまったよ・・・。最初からこんなんで、だいじょうぶかな・・・。1時間目からどんよりしてしまった。

何とか誤魔化し、2時間目になる。「教師用語」というプリントを配り、練習。授業中に使う言葉・・・・例えば「見てください」「わかりましたか」など。
これはそれぞれ訳がついているので分かりやすい。それを口頭練習。
このとき、JTOはまたしでも失敗していたのだ。実はこの「教室用語」の前に、学生の名前のカタカナの書き方を確認しようと思っていたのだったが、すっかりそれを飛ばしてしまったのだ。自分の日本語の読みは分かったけど、書き方もやっぱり知りたいよね。
あわててカタカナで1人1人の名前を板書しながら確認していく。が、半分くらいの学生の名前を確認しただけで、時間がなくなってしまった。JTOのデビュー授業が終わった。

ただ、ひたすら焦りまくった、という印象しかないデビュー授業。。そういえば、授業が始まる前に他の先生方が、「油性ペンでホワイトボードに書いちゃダメよ。」と言ってたっけ・・・・。

授業が終わり、講師室へ戻る。次の先生に名前の確認からお願いします、と引継ぐ。
いやはや、学生はJTOをどう思っただろう。変な印象がついちゃったカナ・・・。とにかく、、第一日目が終わった。

 
 
 第六十二話.第1課。

教科書も届き、みんなそろって勉強できる体制になった。
JTOのクラスは初級クラス。といっても、あいうえおも分からない学生がいると思えば、自分の国である程度勉強してきた学生もいる。その学生の差が大きい。だからできる学生にとっては、こんな「わたしは日本人です。」なんて文型、つまらないだろうね。かといって、あいうえおがわからない学生はこの文でさえ、読めない。う〜ん、難しいね。20人の学生のうち、3つの層にわかれているようだ。その割合が均等な感じがする。
やはり、できる学生の何人かが、上のクラスに行きたい、と言ってきた。とりあえず試験を受けさせる。が、そこまではまだできていないし、上のクラスの人数ももうギリギリでこれ以上は無理と言われた。しぶしぶ一緒に勉強する。・・・・わかるな・・。その気持ち。JTOがESLで勉強していた時によく見られた光景だった。学生にもプライドがあるしね。自分はもっとできるんだ、って言いたいのよね。

JTOがESLにいたときの授業を思い出す。かなり教室の中を動き回った覚えがある。それで普段話さない学生ともコミュニケーションをとっていくことができる。そのためには「活動」が必要。「みんなの日本語」の第1課では自分の名前や職業、その否定などが言えるようになるのだが、学生にワークシートを配り、Aさんはどこの国の人で職業は何、という内容の会話練習の活動をさせた。まだみんなクラスの学生の名前を覚えていない(JTOも)ので、いいきっかけになるといいな、と思った。

JTOの考えとしては、初級の学生にはまず、楽しく勉強して欲しいと思っている。せっかくお金を出して来ているんだから、ある程度の進歩ももちろん必要。でもやはり、特に初級の学生には楽しさから教えたい。今回外国語の勉強を初めてした学生もいる。異国の地で言葉がわからないまま緊張しながら生活するのは大変なことだしね。

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